なぜそうなるか

ブランドのバッグや時計を売ったら税金はかかる?——国税庁は「生活に通常必要な動産」の売却を非課税とし、貴金属や宝石などは1個30万円を超えると外すと書いていました

クローゼットの奥から、何年も使っていないブランドのバッグが出てくることがあります。箱に入ったままの腕時計が、引き出しの隅に残っていることもあります。

買取店に持っていけば、思っていたより高い値段がつくかもしれません。そう考えたとき、同時に浮かぶ疑問があります。売って手にしたお金に、税金はかかるのだろうか、という疑問です。

株や土地を売ったときに申告が要る、という話はよく耳にします。一方で、家の中の物を売ったときの扱いは、あまり話題になりません。

古着をフリマアプリで手放すのと、値の張るブランド品を買取店に売るのとで、扱いは同じなのか。どこかで線が引かれるのか、という疑問です。

国税庁の案内を開くと、この線は金額だけで引かれているわけではありませんでした。売った物の種類と、1個あたりの価額の両方が関わっています。

そこで、国税庁のタックスアンサー2本と、所得税法・所得税法施行令の条文を並べました。特定の買取店やブランドを選ぶための記事ではなく、売値の相場も扱いません。

この記事でわかること
・家具、じゅう器、衣服など「生活に通常必要な動産」を売った所得には、所得税がかからない
・ただし、貴金属・宝石・書画・骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものは、この非課税から外れる
・外れる品目は、所得税法施行令第25条に列挙されている
・非課税の動産を売って損が出ても、その損はないものとみなされる
・課税される場合の譲渡所得には、合計50万円までの特別控除がある

家の中の物を売っても、税金はかからないの?

使っていた物を売っただけでも、所得になるの?

国税庁は、生活に通常必要な動産の譲渡による所得を、課税されない所得として挙げています。

国税庁のタックスアンサー No.3105「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」は、課税されない譲渡所得の1つめに「生活用動産の譲渡による所得」を置き、その中身をこう説明していました。

家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得です。

暮らしの中で使ってきた物を手放して得たお金は、原則として所得税の対象から外れる、という整理になります。

根拠は所得税法第9条です。「非課税所得」の見出しの下、第1項第9号がこの所得を挙げています。

自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具、じゆう器、衣服その他の資産で政令で定めるものの譲渡による所得

条文の書き方は「家具、じゆう器、衣服その他の資産」です。バッグや腕時計という語は、この号にも、タックスアンサーの例示にも出てきません。

売った値段が買った値段より安かったら?

非課税の動産を売って損が出たときの扱いも、同じ第9条に書かれています。第2項は、次に掲げる金額をないものとみなす、と定めていました。

次に掲げる金額は、この法律の規定の適用については、ないものとみなす。

その1号に挙がるのが、第1項第9号の資産を売った収入が、取得費と譲渡費用の合計に満たない場合の不足額です。非課税の動産で出た売却損は、所得税法の上ではないものとして扱われる、という定めです。

30万円を超えると、何が変わるの?

高いブランド品でも、非課税のままなの?

国税庁は、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものを非課税から除いています。

No.3105 は、生活用動産の説明のすぐあとに、ただし書きを続けていました。

ただし、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は除きます。

ここで大事なのは、30万円の線がすべての品物に掛かっているわけではない点です。外れるのは、貴金属・宝石・書画・骨とうなど、決められた種類の品物で、しかも1個または1組が30万円を超えるものに限られます。

外れる品物は、どこに列挙されているの?

「政令で定めるもの」の中身を書いているのが、所得税法施行令第25条です。見出しは「譲渡所得について非課税とされる生活用動産の範囲」でした。

生活に通常必要な動産のうち、次に掲げるもの(一個又は一組の価額が三十万円を超えるものに限る。)以外のものとする。

その「次に掲げるもの」の1号は、宝石や貴金属の類です。

貴石、半貴石、貴金属、真珠及びこれらの製品、べつこう製品、さんご製品、こはく製品、ぞうげ製品並びに七宝製品

2号は「書画、こつとう及び美術工芸品」です。革のバッグや布製品は、この1号・2号のどちらにも名前が出てきません。腕時計も、時計という語では挙がっていませんでした。

手元の時計が「貴金属の製品」に当たるのか、バッグが「生活に通常必要な動産」に入るのかは、条文だけでは読み切れません。個々の品物がどの区分に当たるかは、この記事では判断していません。

課税されるときは、どう計算するの?

非課税から外れたら、売った金額にそのまま税金がかかる?

課税の対象になる場合は、譲渡益から最高50万円の特別控除を差し引いて、譲渡所得の金額を出します。

土地や建物、株式等以外の資産を売ったときの計算は、タックスアンサー No.1460 にまとめられています。売った金額から取得費と譲渡費用を引いて譲渡益を出し、そこから特別控除を差し引く流れです。

特別控除額は、短期譲渡所得と長期譲渡所得の合計で50万円までです。

短期と長期の分かれ目は、持っていた期間です。同じページは、長期譲渡所得を次のように定義していました。

長期譲渡所得とは、所有期間が5年を超える資産を譲渡することにより生ずる所得をいいます。

No.1460 によれば、ほかの所得と合計するとき、短期譲渡所得はその全額、長期譲渡所得はその2分の1を合計します。持っていた期間が5年を超えるかどうかで、合計に入る金額が変わります。

何度も売っていると、扱いは変わる?

No.3105 には、譲渡所得ではなく別の所得として課税されるものの一覧もありました。その5つめが、繰り返し売っている場合です。

(1)から(4)までの資産以外の資産を相当の期間にわたり、継続的に譲渡している場合の所得は、事業所得または雑所得となります。

相当の期間にわたり継続的に売っている場合は、譲渡所得とは別の区分に入る、という書き方です。何回、何年続けば「継続的」になるのかという目安は、No.3105 には書かれていませんでした。

この記事で確認したこと

ブランド品を売ったときの税の扱い
・家具、じゅう器、衣服など生活に通常必要な動産の譲渡による所得は、非課税(所得税法第9条第1項第9号・No.3105)
・貴金属・宝石・書画・骨とうなどで1個または1組30万円を超えるものは、非課税から外れる(施行令第25条)
・非課税の動産の売却損は、ないものとみなされる(第9条第2項)
・課税される場合は、譲渡益から最高50万円の特別控除を引く(No.1460)
・相当の期間にわたり継続的に売っている場合は、事業所得または雑所得になる(No.3105)

売る前に見ておきたいのは、値段そのものよりも、その品物が施行令第25条に挙がる種類かどうかと、1個または1組の価額です。迷う品物があれば、売る前に税務署の相談窓口で確かめておくと、あとで慌てずに済みます。

よくある質問

フリマアプリで服を売ったお金も、申告が要りますか

No.3105 は、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得を、課税されない所得として挙げています。ただし、相当の期間にわたり継続的に売っている場合は事業所得または雑所得になる、とも書かれています。ご自身の取引がどちらの区分に入るかは、税務署で確かめるのが確実です。

30万円を超えるブランドのバッグは、課税されますか

施行令第25条が非課税から外しているのは、貴石・貴金属・真珠やその製品、書画・骨とう・美術工芸品などの種類で、1個または1組の価額が30万円を超えるものです。バッグという語は条文に挙がっていません。個々の品物の扱いは、税務署にご確認ください。

売って損をした場合、ほかの所得と差し引きできますか

所得税法第9条第2項は、非課税とされる生活用動産を売って出た不足額を、ないものとみなすと定めています。非課税から外れる品物の場合の扱いは、この記事では整理していません。

この整理が変わる条件


出典

ブランド品を売る前に、その品物が施行令第25条に挙がる種類かと1個または1組の価額を確かめ、迷う点は税務署の相談窓口で尋ねてください。

当方が上の出典を引いて確かめた日:

記事をすべて見る